活字 & 映画ジャンキーのおたけび! -2ページ目

奈々 + ナナ = NANA

【NANA(映画)】

<2005年、日本>
●監督/大谷健太郎
●出演/中島美嘉、宮崎あおい 他


ご存知、大人気漫画の映画化。
原作は未読だから、比べてどうのは
言えないけど、おもしろく見れた。

映画は、田舎から上京する列車の中で出会った
奈々とナナが、やがて東京で共同生活を始め、
それぞれにふりかかる出来事を通して、
確かなキズナに目覚めていくところまでを描く。

恋人の後を追って上京し、恋がすべてといった奈々。
一方、歌の道に生きながらも、
置いてきた恋に密かに苦しむナナ。
物語の最大の魅力は、何と言ってもこの対照的な
ふたりのキャラにある。
容姿も性格も正反対。
互いが互いにない部分に反発し、
でも、時に認め合って、補う。
まさに、ふたりでひとりという表現がぴったりだ。
宮崎あおいと中島美嘉のハマリ具合が絶妙。
中島美嘉はセリフがやや棒読み調の部分が気になるが、
ライブシーンでは、さすがにそれを吹き飛ばす迫力。

映画のところどころに、奈々のナレーションが
入るのだが、これが映画に引き込まれる
ひとつのポイントになっているように思う。
ナレーションは、現在から数年後、
すべてが過ぎ去った地点から、奈々が過去を
回想しているという感じで、それがある種の
切なさ、そしてやがて来るべき悲劇といったものを
連想させ、見る者は、
今現在のふたりに感情移入してしまうのだ。

原作が完結していないので、その結末がどうなるのか
はわからないが、映画はヒットもあって続編が決定。
ってことは、また途中で終わるってこと?
映画独自のラストってのは…やっぱり原作ファンが
許さないか。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
下川 香苗, 矢沢 あい, 浅野 妙子, 大谷 健太郎
NANA‐ナナ‐novel from the movie

 

夢は美しく、日々は厳しく。

【漫画家超残酷物語(本)】 

●著者 :唐沢なをき
●出版社:小学館(2006.1 発行)
●価格 :¥750


あの永島慎二の名作「漫画家残酷物語」を
現代風にアレンジした物語。
漫画家のおもしろくも哀しい日常が
いくつものエピソードでつづられていく。
(関係ないけど、永島慎二って、
ドカベンの水島新司と昔よく混同していた。
これだけ作品によって絵を描き分けられるって
すげーなあって…。バカだ)

座りっぱなしで、食ってばかりいるので、
ずぶずぶと太っていく漫画家。
漫画家のアイデアや評価は、すべて自分の
おかげと勘違いし暴走するアシスタント。
生活のためにエロ漫画を描き続けるが、
理想とのギャップに苦しむ漫画家。
熱意と押し付けを取り違えた編集者。
仲間のヒットに祝杯をあげつつも、
嫉妬の嵐にさいなまれる漫画家。
過去の栄光を忘れられず、新人に
説教をたれるベテラン漫画家…

などなど、一見、絵のタッチはほのぼの調で、
ノリもギャク的なのだが、その内容は
よく読むと、かなりシリアスで皮肉に満ちている。
なかでも、編集者に打ち切りを宣告された
漫画家が、荒れた末に「この漫画(本書のこと)
を読んだ漫画家の連載は打ち切りになる!」
と負のエネルギーを注入する話は、
笑いながらも、ちょっと怖くなった。

漫画に限らず、創作というのは、ある種の狂気だ。
一歩まちがえば、現実とはかけ離れた世界へ
ワープしてしまう危険性を常にはらんでいる。
そんなギリギリの狭間で生み出された作品には、
テクニックだけでは図り知れない、
作者の魂としか言いようのないものが宿っている。
それが読者の心に届き共鳴した時に、
感動が生まれるのだ。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)
唐沢 なをき
漫画家超残酷物語


森の中に、うごめくもの。

【クライモリ(映画)】

<2003年、アメリカ・ドイツ>
●監督/ロブ・シュミット
●出演エリザ・デュシュク、デズモンド・ハリントン 他


森の中に迷いこんだ、若い男女のグループが、
正体のわからぬ何者かに次々と殺されていく。
と書くと、何やらありがちなホラーを想像する
だろうが、まさにその通り!
この映画、設定や展開は、
お約束のオンパレードなのだ。

「悪魔のいけにえ」「13日の金曜日」
映画の空気は、そんな名作ホラーに近い、
というより、明らかにリスペクトしてるのでは、
という場面もある。
しかしそれらとちょっと違うのは、冒頭で、
謎の者の正体をにおわせているところだ。
しかしこれ、テレビではある理由で
放送できないかもしれない。

お約束というのは、製作者側は百も承知で、
その点は割り切って創っているのだろう。
その代わりにこだわったのは、恐怖の見せ方だ。
無気味に広がる森のイメージを伝える
ふかんのショットの活用、
滝の裏側に隠れたかと思えば、木の枝を伝っての逃走、
また展望台によじ登ったりと、
「森」という舞台をフルに使った演出が
ふんだんに盛り込まれていて、
展開はオーソドックスながら、「おっ!」と
新鮮な印象を受ける。
R-15指定ということで、けっこうグロいシーンも
あるので、苦手な人は要注意。

ただ、テンポよく見れるのはいいんだけど、
もうちょっと怪物の背景や、心情が描かれていれば、
ドラマとしての深みも出たと思うんだけどなあ。
そういうのはこの手の映画には余計なんだろうか。

「狩られる側」の恐怖を、
シミュレーションしたい方には、おすすめ。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
 
ジェネオン エンタテインメント
クライモリ デラックス版

ピッチを駆けぬける夢。

【たったひとりのワールドカップ 三浦知良、1700日の闘い(本)】 

●著者 :一志治夫
●出版社:幻冬舎(1998.8 発行)
●価格 :¥560


以前に一度読んでいたが、
W杯開催年ということもあり、再読。
ドーハの悲劇から、セリヘAへの移籍、Jリーグ得点王、
ワールドカップ最終予選突破、
そして告げられた代表落選…。
本書はその激動の日々のカズの心の軌跡を、
彼へのインタビューを中心にまとめたものだ。

今年6月に開催されるドイツW杯、そのメンバーに
カズの名前が入る事はほぼない。
年齢的なことを考慮すれば、彼は一度もW杯のピッチ
に立つことなく、選手生活を終えることになるだろう。
日本代表のユニホームを着て、W杯に出ることを
サッカー人生最大の目標としてきた男が、
その夢を実現することができないというのは、
なんとも寂しい。

そしてそんなカズを語るに、決して忘れられないのが
フランスW杯直前での代表落ちの一件だ。
フランスの隣国、スイスでの合宿中に会見を
開いた岡田監督の口から
「外れるのはカズ、三浦カズ…」の言葉を聞いた時の
衝撃は今も残っている。
個人的には、あそこまで連れていきながら、
最後の最後にカズを切った岡田監督の非礼は許せない。
たしかに選ぶ立場の監督にも苦悩はあっただろう。
戦術に合わなかったということかもしれない。
しかしW杯は、勝つことにだけ意味があるのではない。
みんな、そこに「夢」を見たいのだ。
素晴らしいプレー、劇的な試合展開、
そして、ドラマチックな選手の輝き…
誰よりも日本代表への熱い思いを抱いた男が、
W杯でゴールを決める。
岡田監督は、多くの日本人が描いた
その夢を奪ってしまった。

しかしこの件について、カズが何か恨みめいたことを
言ったことは一度もない。
ひと足早く合宿から帰国した時の会見で
「日本代表としての誇り、魂みたいなものは
向こうに置いてきた」と語ったカズ。
そこにあるのは、自らの生き方、
そしてサッカーへの、ゆるぎないプライドだ。

日々の生活の中で、悔しい思いをしたり、
苦しさを覚えた時、ふと思う。
「あの時のカズの悔しさに比べれば、
こんなの屁でもないな」

インタビュー中のカズの言葉は、あえて編集すること
なく、そのままの形で掲載しているので、
まるで自分が横にいて話を聞いているような
臨場感がある。
ありのままのカズを知るには、格好の一冊だ。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)
一志 治夫
たったひとりのワールドカップ―三浦知良、1700日の闘い


走ることは、生きること。

【マラソン(映画)】

<2005年、韓国>
●監督/チョン・ユンチョル
●出演/チョ・スンウ、キム・ミスク 他


実話をもとにした韓国映画。

【自閉症の青年、チョウォンが、家族やコーチに
支えられながら、フルマラソンの完走を目指す】
言葉にすれば、それだけのストーリーで、
いささか予定調和の感もあるけど、
俳優の好演もあって、あと味のさわやかな映画に
仕上がっている。

主演のチョ・スンウは「ラブ・ストーリー」でも
いい味を出していたけど、本作では、自閉症という
難しい役を、全く不自然なところなく演じていて、
その演技力に驚かされる。
チョウォンを見守りつつも、息子にマラソンを
やらせるのは、自分のエゴに過ぎないのでは
ないか、と悩む母親。
「私の願いは、息子よりも1日長く生きること」
というセリフは、重くもせつない。
そして酒びたりで自堕落な生活を送るコーチ。
飲酒運転の罰として養護施設で体育指導をして彼は、
母親に頼み込まれ、いやいやチョウォンの指導を
始めるのだが、チョウォンの一途な性格と、
たしかな素質に、次第に心を変えはじめる。

見る前は、お涙頂戴のベタな感動系の映画かなと
思っていたが、演出はどちらかといえば淡々として
いて、笑いどころもけっこうある。
登場人物たちも、それぞれ身勝手な面を持った、
生身の人間として描かれているので、
きれいごとではないリアリティがある。
しかしそれだけに、ひたむきに走るチョウォンの
横を流れる風景…太陽の光、雨に濡れる草花、
頬をなでる風など、彼の目を通してみた世界が、
実に美しく、ある種の詩情に満ちていて、
そこにジーンとしてしまうのだ。

現実には、「走る」ことですべての問題が
解決するなんてことはないだろう。
しかしチョウォンにとって、
走ることを得たことは、生きる力を手にしたこと
に等しいにちがいない。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
アミューズソフトエンタテインメント
マラソン

 

やりすぎに注意。

【閉ざされた森(映画)】

<2003年、アメリカ>
●監督/ジョン・マクティアナン
●出演/ジョン・トラボルタ、コニー・ニールセン 他


ひとつの事実をめぐって、食い違う証言が
飛び交い、見る者を混乱させる。
果たして真実はどこにあるのか?
見ていて、黒澤の「羅生門」を思い出した。

ジャングルで訓練中の米軍のレンジャー部隊が
行方不明になり、7人のうち2人だけが生還する。
一体何があったのか、口を割ろうとしない隊員に、
尋問に長けた元レンジャー隊員と女性大尉が迫る。
ようやく事の経緯を話し出した隊員だったが、
2人の証言は全く噛み合わない…

冒頭の緊迫感あふれる画面と、展開に引き込まれる。
尋問にあたるトラボルタは、まあいつも通りの演技で
あまりその道の達人のようには見えないところは
置いといても(笑)、なかなかいい感じ。
「ダイハード」の監督であるジョン・マクティアナン
が、こういったサスペンスも撮れるんだなと感心した。

が、物語が進むにつれて、だんだん頭が混乱してきた。
その理由は、ちょっと話を複雑にし過ぎたことに
あるように思う。
この手の映画は、どんでん返しが命、
なのはわかるけど、あまりにやりすぎると、
何が何だか状態になってしまう。
加えて、隊員役の俳優に知ってる顔がいないので、
顔と名前が、なかなか一致しない。
そのせいで、誰が、誰を、どうした。
ということが、セリフで聞いても
すんなりと入ってこないのだ。
そして問題のオチ。たしかに意外という意味では
これ以上意外なオチもないかもしれないけど…

時間もコンパクトにまとまっているので、
退屈せずに見れるけど、
もうちょっとエピソードを整理して、
すっきりまとめたら、
もっとおもしろくなったのに思う。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
閉ざされた森 コレクターズ・エディション

 

雪は降り積もる。ふたりに、深く、静かに。

【四月の雪(映画)】

<2005年、韓国>
●監督/ホ・ジノ
●出演/ペ・ヨンジュン、ソン・イェジン 他


ヨン様人気にも乗って、大ヒットを記録。
劇場には、おばさま方の長い列が…。
どうも韓流ブーム以来、ヨン様の顔が出てくると、
あの「冬ソナ」のテーマ曲が自動的に頭の中を
流れてしまって、素直に映画に集中できない。
そのせいで、この映画も見ようかどうか迷って
いたのだけれど、実際見てみるとそれほど悪くない。

コンサートの照明マンのインスは、妻が交通事故に
あったという知らせに病院へ駆けつける。
そこには妻と同乗していた男の妻ソヨンがいた。
妻と男の携帯電話やカメラから、
ふたりが不倫関係にあったことがわかる。
意識の戻らないふたりを見守りながらも、
インスとソヨンは次第にひかれあっていく…

全体の印象としては、とにかく静かだ。
「八月のクリスマス」でも感じたが、
監督のホ・ジノは、音楽やセリフを極力抑えた、
静けな画面作りが持ち味のようだ。
その分、俳優たちも表情で勝負でき、演じがいが
あるのではないだろうか。
逆にいうと、淡々としすぎて盛り上がりに
欠けるともいえるが、これは見る者が、
登場人物の心情に思いを馳せ、
共感する映画なのだろう。

ふたりが互いを求め合うのは、
自分を裏切った者への復讐なのか、
それとも傷ついた心の空洞を
埋めようとするためか。
映画には結論らしい結論はない。
答えは、見た人それぞれに委ねられているのだ。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
四月の雪 (通常版)

 

シンデレラには役不足?

【シンデレラマン(映画)】

<2005年、アメリカ>
●監督/ロン・ハワード
●出演/ラッセル・クロウ、レネー・ゼルウィガー 他


アカデミー賞に輝いた「ミリオンダラー・ベイビー」
に続いて公開されたボクシング映画。
モデルとなった実在のボクサーを
ラッセル・クロウが熱演。

時代は、世界大恐慌のまっただ中の
1920年代後半から30年代。
かつてスターボクサーだったジム・ブラドックは、
恐慌の影響もあって引退をよぎなくされ、
肉体労働で家族を養っていたが、
日々の食ベ物にも事欠くありさま。
そんな彼に、カムバックのチャンスが舞い込む。
家族のために、自らの誇りのためにリングに上がった
ブラドックは勝利を重ね、やがて世界チャンピオン
との試合に挑む…

家族愛にアメリカンドリームとくれば、
まさハリウッド映画の王道。
ああ、ええ話や~というのが率直な感想だ。
ボクシングシーンも、かなりトレーニングを
積んだことがわかる、シャープな動きで見れる。
音楽を抑えて、ボクシングそのものの音で
リアリティを追求したつくりも、迫力を生んでいる。

でも…何か物足りない。
どこかで見たようなシーンが多く、オリジナリティ
という点で弱いと言わざるを得ない。
ミリオンダラーは女子ボクシングというだけで、
新鮮な面もあったが、
本作の場合、これという売りがない。
実在の人物をモデルにした映画の場合、
いつも思うことだが、ストーリーにウソを
つけないという制約があるためか、
起伏が少ない、平板なものになりがちだ。
アメリカ人の中で、このブラドックというボクサーが
どれほど親しまれている存在なのか知らないが、
ほとんど予備知識のない日本人が見た場合
「ああ、家族思いで、頑張ったボクサーなんだなあ」
という程度で、それ以上の感情移入は難しい。
映画の主人公に取り上げるほどの、
魅力ある人物には映らないのだ。

いい映画なのはまちがいないが、
「シンデレラマン」というタイトルから予想した
劇的な人生ほどのインパクトはなかった。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
シンデレラマン

 

「日本」を忘れた「ジャパン」へ。

【国家の品格(本)】 

●著者 :藤原正彦
●出版社:新潮社(2005.11発行)
●価格 :¥714


新書では今一番の売れ行きの本書。
期待して読んだが、特別目新しい内容ではなかった。
これ、大学での講演がベースになっているようで、
そのせいか話題が飛びぎみで、一貫したテーマと
いうものがいまいち感じられない。
文章はやさしくスイスイ読めるのはいいんだけど。

作者は、長い歴史に培われたきた日本独自の
価値観の崩壊を指摘し、感性の荒廃を憂う。
そしてアメリカを中心とするグローバリズムに
異をとなえ、今の日本に必要なのは、
論理よりも情緒、英語よりも国語、
民主主義よりも武士道精神と説く。

数学者である作者が考えるところの
日本再興のポイントが、
理論整然とした数式とは正反対のものと
いうのも、何だかおもしろい。
古池に蛙が飛び込む。
外国人から見れば「それがどうした?」
という情景にも、「もののあわれ」を感じ取ることが
できる、日本人のそんなセンスを大事にしてこそ、
日本が日本として存在し得る。
書かれているのは、これまでも語り尽くされて
きたような事なのだが、
今なぜ、このような本があらためて
売れているのかを考えると興味深い。

9.11の同時テロや、アジア諸国との
緊張関係など、ここ数年、
世界の中での日本の在り方を問われる
場面が続いている。
加えて、利権に群がる政治家や
マネーゲームに走る企業や投資家、
無気力に漂う若者など、
みんながどこか今の日本社会に
正常でないものを感じているのでないか。
日本って、日本人って、こんなんだったっけ?
という疑問が本書を手に取らせているのでは
ないだろうか。
たまにはゆっくりと日本のカタチについて
考えてみる。そのきっかけとしては
いい本ではないだろうか。


■個人的ハマリ度  ★★★(★5つが最高)
藤原 正彦
国家の品格

姉と妹、女と女。

【何がジェーンに起ったか?(映画)】

<1962年、アメリカ>
●監督/ロバート・アルドリッチ
●出演/ベティ・デイビス、ジョーン・クロフォード 他


名作として名高い作品。
今回はじめて見て、女優ふたりの怪演に圧倒された。

子役スターのジェーンは、自分がモデルの人形も
売り出されるほどの人気者。
一方、その姉のブランチはスポットライトを浴びる
妹をくやしげに見ていた。
しかしそれから数十年が経ち、立場は逆転。
ブランチは名女優の地位を確固たるものとし、
ジェーンは大根役者としてバカにされていた。
そんなある夜、ブランチは、ジェーンの運転ミスで
下半身不随のケガを負い、車イスでの生活を
よぎなくされる…

2時間以上ある映画のほとんどが、姉妹が暮らす
家の中のシーンなんだけど、これが全然退屈しない。
カラダの自由にならないブランチに、
ねちっこくいやがらせを続けるジェーン。
子供の頃の栄光が忘れられず、再び舞台に上がる
日を妄想する姿は、見ていてゾッとするほどの
狂気を感じさせる。
一方、姉のブランチは、ジェーンの仕打ちに怒り、
耐えながらも、壊れていく妹をどこかで案じている。
その姿は姉妹の争いであると同時に、
女同士の情念の衝突でもある。

エスカレートしていくジェーンの行動が
ある悲劇を生む。
ふたりの行きつく先にあるものとは…

ラストに衝撃の真実が明かされ、
印象的なシーンで映画は幕を閉じるのだが、
なんとも言えない、せつない印象を受けた。
姉と妹、兄と弟は、いちばん近いものである
だけに、時に憎悪の対象ともなる。
だがそうであっても、
その絆を完全に断つことはできない。
この映画が描こうとしているのは、
絶望の中にあって、かすかに見える希望
ではないだろうか。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
ワーナー・ホーム・ビデオ
何がジェーンに起ったか?