夢は美しく、日々は厳しく。 | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

夢は美しく、日々は厳しく。

【漫画家超残酷物語(本)】 

●著者 :唐沢なをき
●出版社:小学館(2006.1 発行)
●価格 :¥750


あの永島慎二の名作「漫画家残酷物語」を
現代風にアレンジした物語。
漫画家のおもしろくも哀しい日常が
いくつものエピソードでつづられていく。
(関係ないけど、永島慎二って、
ドカベンの水島新司と昔よく混同していた。
これだけ作品によって絵を描き分けられるって
すげーなあって…。バカだ)

座りっぱなしで、食ってばかりいるので、
ずぶずぶと太っていく漫画家。
漫画家のアイデアや評価は、すべて自分の
おかげと勘違いし暴走するアシスタント。
生活のためにエロ漫画を描き続けるが、
理想とのギャップに苦しむ漫画家。
熱意と押し付けを取り違えた編集者。
仲間のヒットに祝杯をあげつつも、
嫉妬の嵐にさいなまれる漫画家。
過去の栄光を忘れられず、新人に
説教をたれるベテラン漫画家…

などなど、一見、絵のタッチはほのぼの調で、
ノリもギャク的なのだが、その内容は
よく読むと、かなりシリアスで皮肉に満ちている。
なかでも、編集者に打ち切りを宣告された
漫画家が、荒れた末に「この漫画(本書のこと)
を読んだ漫画家の連載は打ち切りになる!」
と負のエネルギーを注入する話は、
笑いながらも、ちょっと怖くなった。

漫画に限らず、創作というのは、ある種の狂気だ。
一歩まちがえば、現実とはかけ離れた世界へ
ワープしてしまう危険性を常にはらんでいる。
そんなギリギリの狭間で生み出された作品には、
テクニックだけでは図り知れない、
作者の魂としか言いようのないものが宿っている。
それが読者の心に届き共鳴した時に、
感動が生まれるのだ。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)
唐沢 なをき
漫画家超残酷物語