走ることは、生きること。 | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

走ることは、生きること。

【マラソン(映画)】

<2005年、韓国>
●監督/チョン・ユンチョル
●出演/チョ・スンウ、キム・ミスク 他


実話をもとにした韓国映画。

【自閉症の青年、チョウォンが、家族やコーチに
支えられながら、フルマラソンの完走を目指す】
言葉にすれば、それだけのストーリーで、
いささか予定調和の感もあるけど、
俳優の好演もあって、あと味のさわやかな映画に
仕上がっている。

主演のチョ・スンウは「ラブ・ストーリー」でも
いい味を出していたけど、本作では、自閉症という
難しい役を、全く不自然なところなく演じていて、
その演技力に驚かされる。
チョウォンを見守りつつも、息子にマラソンを
やらせるのは、自分のエゴに過ぎないのでは
ないか、と悩む母親。
「私の願いは、息子よりも1日長く生きること」
というセリフは、重くもせつない。
そして酒びたりで自堕落な生活を送るコーチ。
飲酒運転の罰として養護施設で体育指導をして彼は、
母親に頼み込まれ、いやいやチョウォンの指導を
始めるのだが、チョウォンの一途な性格と、
たしかな素質に、次第に心を変えはじめる。

見る前は、お涙頂戴のベタな感動系の映画かなと
思っていたが、演出はどちらかといえば淡々として
いて、笑いどころもけっこうある。
登場人物たちも、それぞれ身勝手な面を持った、
生身の人間として描かれているので、
きれいごとではないリアリティがある。
しかしそれだけに、ひたむきに走るチョウォンの
横を流れる風景…太陽の光、雨に濡れる草花、
頬をなでる風など、彼の目を通してみた世界が、
実に美しく、ある種の詩情に満ちていて、
そこにジーンとしてしまうのだ。

現実には、「走る」ことですべての問題が
解決するなんてことはないだろう。
しかしチョウォンにとって、
走ることを得たことは、生きる力を手にしたこと
に等しいにちがいない。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
アミューズソフトエンタテインメント
マラソン