「日本」を忘れた「ジャパン」へ。 | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

「日本」を忘れた「ジャパン」へ。

【国家の品格(本)】 

●著者 :藤原正彦
●出版社:新潮社(2005.11発行)
●価格 :¥714


新書では今一番の売れ行きの本書。
期待して読んだが、特別目新しい内容ではなかった。
これ、大学での講演がベースになっているようで、
そのせいか話題が飛びぎみで、一貫したテーマと
いうものがいまいち感じられない。
文章はやさしくスイスイ読めるのはいいんだけど。

作者は、長い歴史に培われたきた日本独自の
価値観の崩壊を指摘し、感性の荒廃を憂う。
そしてアメリカを中心とするグローバリズムに
異をとなえ、今の日本に必要なのは、
論理よりも情緒、英語よりも国語、
民主主義よりも武士道精神と説く。

数学者である作者が考えるところの
日本再興のポイントが、
理論整然とした数式とは正反対のものと
いうのも、何だかおもしろい。
古池に蛙が飛び込む。
外国人から見れば「それがどうした?」
という情景にも、「もののあわれ」を感じ取ることが
できる、日本人のそんなセンスを大事にしてこそ、
日本が日本として存在し得る。
書かれているのは、これまでも語り尽くされて
きたような事なのだが、
今なぜ、このような本があらためて
売れているのかを考えると興味深い。

9.11の同時テロや、アジア諸国との
緊張関係など、ここ数年、
世界の中での日本の在り方を問われる
場面が続いている。
加えて、利権に群がる政治家や
マネーゲームに走る企業や投資家、
無気力に漂う若者など、
みんながどこか今の日本社会に
正常でないものを感じているのでないか。
日本って、日本人って、こんなんだったっけ?
という疑問が本書を手に取らせているのでは
ないだろうか。
たまにはゆっくりと日本のカタチについて
考えてみる。そのきっかけとしては
いい本ではないだろうか。


■個人的ハマリ度  ★★★(★5つが最高)
藤原 正彦
国家の品格