男もうなずく、「女の子」ゴコロ。 | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

男もうなずく、「女の子」ゴコロ。

【永遠の出口(本)】 

●著者 :森 絵都
●出版社:集英社文庫(2006.2 発行)
●価格 :¥580


はじめて読んだけど、この著者はもともと児童文学
でデビューし、その分野ではすでに多くの傑作を
書いている人で、入試問題に作品が
使われたことも何度もあったとか。
その著者がはじめて書いた、大人向けの小説が本作だ。
もっとも最近は小説のジャンルレス化は進んでいて
児童文学でいえば、あさつあつこの「バッテリー」
が大ヒットしたことも記憶に新しい。
やはり、いいものに大人も子供も関係ないのだ。

本作は、ひとりの少女の小学校3年から高校卒業
までの歩みを、連作短編の形でつづった物語だ。
一読した感想は「わかるわかる」だ。
主人公は女の子(しかも若い!)だけど、おっさん
である自分にも、その感覚や行動に共感できるのだ。
もしかしたら、子供の時は、
男でも女でもなく、あくまで同じ
「子供」であるからなのかもしれないけど、
主人公が中学、高校と成長していっても
この「わかる」というのは消えないのだ。

これはひとえに、綿密にして繊細な
主人公の心理描写によるものだろう。
主人公の両親や姉への目線、友達や恋人への微妙な
思いなど、誰もが「ああ、これってあるよなあ」と
思わずにはいられないリアリティがあるのだ。
それ故に、時にグサッ!とつき刺さるような鋭さで、
主人公の痛みが伝わってきて、それほどドラマチック
な場面でもないのに、何度かジーンときてしまった。

加えて個人的には、作者が同世代ということもあり、
出てくる流行アイテムがなつかしさをくすぐり、
共感度アップにつながっている部分もある。
でも、さすがに新沼けんじのファンの女の子は
当時いなかったけどなあ…。
それって、一世代前の気がするんだけど。(笑)

文章や構成も思わず「座布団三枚!」と
言いたくなるほどうまい。
これは、他の作品も要チャックだ。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)
森 絵都
永遠の出口