ニンゲン・ヒトラー | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

ニンゲン・ヒトラー

【ヒトラー 最期の12日間(映画)】

<2004年、ドイツ>
●監督/オリヴァー・ヒルシュビーゲル
●出演/ブルーノ・ガンツ、アレクサンドラ・マリア・ララ 他


アドルフ・ヒトラーの自決までの日々を追った、
ドキュメントタッチの作品。
けっこう長いのだけど、緊迫感に満ちた映像に
目が離せなかった。
映画は、ヒトラーの秘書を務め、戦争を生き延びた
女性が、その時を回想する語りから始まる。

1942年、トラウドゥル・ユンゲは、
ヒトラーの個人秘書に採用される。
戦局は次第に悪化の一途をたどり、
1945年4月、ソ連軍はベルリンの中心まで侵攻、
追いつめられたヒトラーは地下にこもりながら
指揮をとる。
ベルリン陥落が目前に迫っても、ヒトラーは
決して負けを認めようとしない…

ヒトラーを演じたブルーノ・ガンツの熱演が光る。
容貌もほんとにそっくりで、
(というか、もともと似てたから役に
決まったのか?)まさにヒトラーがそこにいる、
という錯覚を覚えるほど。
戦局の厳しさに狂気を帯びた目で激高する一方、
秘書や子供たちには、やさしい眼差しを向ける
ヒトラーの両面を、丁寧に、誠実に演じている。

ヒトラーというとユダヤ人の虐殺というイメージが
強いが、映画がヒトラーの晩年を描いているため、
それに対しての直接の描写はほとんどない。
この企画自体、よく実現できたものだと思うが、
ユダヤ関係をメインにするのは、
やはり難しい面があるのかもしれない。
あくまで、ヒトラーの最期に至る過程を、
過剰にドラマチックに演出するのでもなく、
事実にもとづき、客観的に描写しようとしている
印象だ。

勘違いしていたのは、ヒトラーは最期はひとりで
自決したものだと思っていたのだけど、
妻である女性と一緒に亡くなっていた点。
しかも結婚式をあげたのは、その数日前。
敵機の爆撃音が響く中だ。
この孤独な支配者に、最期を一緒に迎える者が
いたというのは、彼にとっての唯一の救いで
あったかもしれない。

強さ、もろさ、ありのままの人間、ヒトラーを
知るには格好の一本だろう。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
日活
ヒトラー ~最期の12日間~ スペシャル・エディション