沈没前夜は続いている? | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

沈没前夜は続いている?

【日本沈没(映画)】

<1973年、日本>
●監督/森谷司郎
●出演/藤岡弘、丹波哲郎 他


今年、スマップの草なぎ主演で
リメイク作が公開される。
その前に本編をチェックしておこうと鑑賞。
もう30年以上前の作品だけど、なかなかどうして
今でも十分に見応えがある。

深海潜水艇で日本海溝の調査に赴いた田所博士
(小林桂樹)と操縦士の小野寺(藤岡弘)は、
海底に異変が起きていることを発見する。
やがて大地震が東京を襲い、壊滅的な被害が
出るが、それは、来るべき日本沈没の日への
序章に過ぎなかった…

まず、俳優陣が濃い~!!
藤岡弘は今と変わらぬあのしゃべりだし、
総理大臣には丹波哲郎!
博士役の小林桂樹も、くせ者の匂いを
プンプンさせている。
しかし、そのやや過剰とも思える演技が、
この映画のスケール感には逆にマッチしているのだ。

東京の街の破壊や富士山の爆発、大津波など、
特撮シーンも満載。もちろんCGなどない時代だから
ほとんどがミニチュアを使ったもので、
現在と比べると見劣りするのは当然だが、
当時としては、ものすごい力が入っている。

映像的なものに加え、感心したのは、
実際にこういう状況になった場合の被害はどうか?
日本列島の消失という未曾有の危機に面し、
政府はどう動き、解決策を見い出すのか?
といったことに対しての回答が、かなりの
リアリティとともに描かれていることだ。
これは徹底したリサーチのもとに執筆された
小松左京の原作の力が大きいのかもしれない。

この映画が公開された当時は、高度経済成長の
まっただ中にありながら、その一方で
「ノストラダムスの大予言」など、
世紀末の思想が蔓延していた時期だ。
そんな未来に対する漠然とした不安が、
「日本沈没」というショッキングなモチーフと
重なって、大ヒットしたのではないだろうか。
だとすると、明日に夢や希望を抱きがたい
今という時代も、何か当時と似たものが
あるように思う。

消え行く日本を見据えながら、田所博士が
つぶやく「日本を信じたい」という台詞が
ズンと胸に迫ってくる。
リメイクが、平成の世の日本、そして日本人
への思いをどう描くのか楽しみだ。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
アミューズソフトエンタテインメント
日本沈没 M-1.0