謎の裏に、愛あり。 | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

謎の裏に、愛あり。

【容疑者Xの献身(本)】 

●著者 :東野圭吾
●出版社:文藝春秋(2005.8 発行)
●価格 :¥1,680


昨年の「このミステリーがすごい!」などで、
軒並みランキングの1位を独占した話題作。
まもなく発表される直木賞にもノミネート
されている。(すでに6回目の候補。
いいかげん取らせたれよ)
今年はもうすぐ「白夜行」のドラマも
始まるし、東野の当たり年になりそう。

離婚して娘と暮らす靖子を、
ある日、別れた夫が訪ねてくる。
変わらず横暴をはたらく夫を、
靖子は思わず殺してしまう。
途方にくれた靖子だが、
隣室に住む高校の数学教師、
石神が救いの手を差しのべる。
実は石神は、
以前より靖子に恋焦がれていたのだ。
靖子を罪から逃がすために石神が仕掛けた
驚愕のトリックとは?
また石神と旧知の仲であり、刑事からアドバイス
を請われる身でもある大学教授、湯川が推理する
犯人像とは?

設定の妙、トリックの斬新さ、そして石神を
はじめとした登場人物の造型。
たしかに評判に違わず、よくできてる。
知らなかったけど、この湯川という大学教授を
主人公にしたシリーズもあるらしい。

理系出身で、元エンジニアという肩書きのある
東野らしい、数式をちりばめたアカデミックな
タッチと、石神の靖子への純愛とも言える
想いがかもし出すせつなさがミックスし、
独特の空気が生まれている。
文章の読みやすさもあり、すらすらと一気に
読んでしまった。

十分満足できるのだが、ちょっと引っかかったのは、
石神がなぜそこまで、
靖子のために尽くせるのかという点。
ラスト近くに、石神が靖子に引かれたきっかけが
描写されるのだが、正直「え、それだけ?」
と思ってしまった。
まあ、人を好きになるのに理由なんていらないと
いえばそうだが、それはあくまで現実でのこと。
小説(特にこういうミステリー系)では、そこに
説得力がないと、登場人物に感情移入できない。
個人的にはその一点のみで、
真の傑作になりそこねたという印象になって
しまったのが残念。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)
東野 圭吾
容疑者Xの献身