交渉 or 交流? | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

交渉 or 交流?

【交渉人 真下正義(映画)】

<2005年、日本>
●監督/本広克行
●出演/ユースケ・サンタマリア、寺島進 他


『踊る大捜査線』から生まれた、スピンオフ企画。
今年は本作以外にもスピンオフ第二弾として
「容疑者 室井慎次」も公開され、ヒットした。
こういう番外編が制作されるのも、それぞれの
キャラクターがしっかりと立っていて、また
ファンに愛されているからだと思うが、
今回のユースケ演じる真下は、どうもぼやけた
印象だ。

2004年のクリスマス・イブ。
東京の地下鉄を走る最新鋭の実験車輌(通称クモ)
が何者かに乗っ取られ、乗降客200万人の命が
危険にされされる。
犯人から名指しされた警視庁初の交渉人・
真下正義は、言葉を武器に姿が見えない敵に
立ち向かう…

設定はおもしろいし、アクションシーンも
CGをうまく使って、なかなかの迫力。
初登場の寺島進演じる無頼派刑事も、
いい味を出している。
テンポは、踊るシリーズの本広監督だけに
折り紙付き。ゆえに、それなりに楽しく
見れるのだが、不満もないではない。

一番物足りないのは、交渉人である真下の、
肝心の交渉テクニックが見えないところ。
犯人と真下は頻繁にやりとりを重ねるのだが、
なんだかダラダラと普通に話してるだけで、
「おー!」とか「さすが、やるな」
という驚きがない。
プロの技とでもいうべきものが、感じられないのだ。
わざわざ「交渉人」とタイトルを打ってるのだから、
観客はそこに期待しているはずだし、
その部分をしっかり描いてこそ、
カタルシスも生まれるというものだ。
また、真下はどういったスタンスで
交渉に望んでいるのか。
どんなタイプの交渉人であろうと
しているのか。ということもわからないので、
人物としての魅力に欠けてしまう。

それと犯人の正体が、最後まで結局わからない
ってのも、なんとも消化不良な印象。
わざわざ真下を相手役に指名しているのだから、
何か関係があるヤツでは?と思ったのだが、
そうでもないし。
無気味な余韻をねらったのかもしれないが、
この手のサスペンスで、それをやっちゃ
ただの手抜きにしか感じられない。

全体を流れる空気がいいだけに、
ところどころの中途半端さ加減が、
なんとももったいない気がした。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)


ポニーキャニオン

交渉人 真下正義 スタンダード・エディション