フライ(飛翔)には、助走が大切です。 | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

フライ(飛翔)には、助走が大切です。

【フライ,ダディ,フライ(映画)】

<2005年、日本>
●監督/成島出
●出演/岡田准一、堤真一 他


「GO」で知られる金城一紀の原作を
作者自らが脚本を手掛けて映画化。

堤真一演じる中年サラリーマン、鈴木は、
娘に大ケガをさせた男に復讐するため、
岡田准一演じる高校生、スンシンからケンカを
習う。やがて鈴木とスンシンには、
年齢を超えた友情が育まれていく。
そして迎えた対決の時…。

なんだか時代がひとむかし前の話のような
古くさい印象。
原作を読んでいないから詳しくはわからないが、
小説は、この作者が得意とするポップでノリの
いいものなのかもしれない。
映画化するにあたっても、そんな空気を出そう
としているのだろうが、空回りしている気がする。

モノクロで始まるドラマは、唐突に大怪我を
した娘のシーンとなるなど、かなり重い。
コメディ調を予想していたから、「え?」と
いう感じだった。
スンシンが出てくるところから、背景は
カラーに変わり、徐々に空気もほぐれてくる
のだが、最初の印象があるせいか、スンナリと
入っていけない。

主演のふたりは、かなりの熱演。
特に堤は、ジャ-ジ姿で全力疾走し、木をよじ登り、
泥まみれになって殴られたりと、ほんとにお疲れさま、
と声をかけたくなるほど。
それだけにもったいなあと思うのだ。
まあふたりのトレーニングシーンがひとつの見せ場と
なるのは当然だろうが、あまりにそれに寄り過ぎで、
ふたりのキャラがぼやけてしまっている。

鈴木のそれまでの娘や妻との関係はどうだったのか、
スンシンはどういった生活をしているのか、
ほとんど何もわからない。
だからいまひとつ感情移入ができない。
ただ、娘をやられた男の復讐物語でしかないのだ。
鈴木の男として、父親のしての成長を描こうと
するなら、成長以前をもっと描き込む
必要があるように思う。
それがあってこそ、フライ(飛ぶ)した時の
カタルシスがあるのだ。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
東映
フライ,ダディ,フライ