兄弟ゲンカ進化論。 | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

兄弟ゲンカ進化論。

【黒冷水(本)】 

●著者 :羽田圭介
●出版社:河出文庫(2005.11 発行)
●価格 :¥546


第40回文藝章受賞作。
作者は当時、何と17才の現役高校生という
ことで話題を読んだ。
もっとも今年の同賞受賞者は、それを
上回る15才の女子中学生だとか。
文学賞の若返り(というんだろうか?)
はどこまで進むのだろう。

本書のテーマは、ずばり兄弟ゲンカ。
といっても口げんかやカラダをはったりといった、
わかりやすいものではない。
兄のいない間に、執拗にその部屋をアサり続ける弟と、
それに気づかぬフリをしながら、
トラップをしかけて迎え撃つ兄。
持久戦とも思える異様な対立がくり広げられていく。

兄弟ゲンカという、ありそうであまりない題材を
選んだ、目の付けどころがいい。
実際に兄弟がいる者が読めば、あーわかるなあと
いうリアリティも備えている。
文章は、さすがに少々荒い面もあるが、
それがこの小説の乾いた空気とマッチしていて、
それほど気にはならない。

兄弟の確執はいよいよエスカレートし、
ある日、悲劇が起こる。
それを乗り越えた時、ふたりの心が近づくに
思えたのだが…。
このラストの締め方は、意見がわかれるところ
だろうが、僕は「そーきたか!」と膝をうった。

兄弟って、表から見える姿だけと違って、
案外あなどれない。
鋭い観察眼を持った、
若い作家のこれからが楽しみだ。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)
羽田 圭介
黒冷水