15年間と、24時間。 | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

15年間と、24時間。

【ルパンの消息(本)】 

●著者 :横山秀夫
●出版社:光文社(2005.5 発行)
●価格 :¥920


「半落ち」などで、今やすっかりベストセラー
作家になった横山秀夫の幻の処女作。
1991年のサントリーミステリー大賞佳作を受賞
したが刊行されることなく、今回、加筆した上で、
ようやく出版されることになった作品だ。

平成2年12月、警視庁に一本のタレ込み情報が
もたらされる。15年前に自殺として処理された
女性教師の転落死は、実は殺人で、犯人は教え子
の3人だという。3人は教師が亡くなる同時期に、
「ルパン作戦」と名付けた
期末テスト奪取計画を実行していた。
時効までわずか24時間、15年の時を経て、
驚愕の真相が蘇る…。

デビュー作らしく、完成された現在の文章に
比べると荒さも目立つが、若々しい勢いにのまれ、
一気に読める。
時効まで24時間というタイムリミットと、
事件から15年の経過という、両極の時の対比が
効いていて、あきさせない。
警察内部の描写は、現在の作風を匂わすに十分で、
さすがのリアリティだ。

ただちょっと気になったのは、
不良である3人が、そもそもテストを盗もう
なんてこと考えるかなあ?という点。
それと、あの3億円事件も顔をのぞかせるが、
これはやや欲張りすぎの感もある。

二転三転の上、物語は意外な結末を迎える。
ちょっとせつない空気がただよう
この結末は悪くない。
横山ファンはもちろん、ミステリー好きに
とって読んで損はない作品だろう。


■個人的ハマリ度  ★★★(★5つが最高)
横山 秀夫
ルパンの消息