電車の中の電車。 | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

電車の中の電車。

【電車男(映画)】

<2005年、日本>
●監督/村上正典
●出演/山田孝之、中谷美紀 他


劇場で見て、出来のよさに感動したので
もう一度DVDで鑑賞。

2チャンネルにはじまり、原作本、映画、漫画、
ドラマ、そして芝居まで、今年あらゆるジャンルに
吹きまくった電車旋風。
全部見たわけでないが、個人的にはこの映画版が、
いちばん原作のテイストに近い雰囲気で良かった。
ドラマ版もそれなりにいい味を出していたが、
ちょっとコメディ色が強すぎて、ノレなかった。

電車男をつらぬくテイストは、笑い所はあるに
せよ、その中心は「せつなさ」だと思う。
映画版は、スクリーン全体に何ともいえぬ
せつなさが漂っていて、始まってものの数分で
その世界にすんなりと入っていけるのだ。

ストーリーはもうご存知の通りだが、
リアル世界での主人公とエルメスの交流と、
ネット上での住人とのやりとりの部分が、
違和感なく、テンポよく描けていて、
このあたり、脚本、演出ともに
職人芸的な冴えを見せている。

そして何といっても、主演の山田孝之の
ほとんど神がかり的ともいえる演技。
これなくして、電車男は成立し得なかっただろう。
聞けば、彼はプライベートではフィギア収集が
趣味のひとつなど、おたく的な面があるとか。
電車男の心境に共感できるものがあったのかも
しれない。まさに役に同化していると
言っても過言でない熱演ぶりなのだ。
それだけに、見ている側も、いつのまにか
スクリーンの中の山田、いや電車男とシンクロし、
応援してしまうのだ。

クライマックスの電車男の台詞には、
恋愛だけでなく、何かに踏み出すことを
ためらっている全ての人にとって、
何らかの力をもらえるはずだ。
でも、その後のあれは、一度で良かったんじゃない?
と思ってしまったけど。(笑)

ラストの、原作にはないちょっとした
エピソードもシャレっ気があって、いい感じ。
見終わっても、しばらく心地よい余韻が消えない。
そんな映画だ。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
東宝
電車男 スペシャル・エディション