作品のカラーコーディネート。 | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

作品のカラーコーディネート。

【誰か(本)】 

●著者 :宮部みゆき
●出版社:光文社(2005.8 発行)
●価格 :¥900


最近は時代ものやファンタジーなどがメインで
現代を舞台にした作品が少ない宮部さんの
久しぶりの現代ミステリー。

大財閥「今多コンツェルン」会長の娘婿である
杉村三郎は、ある日義父から妙な依頼を受ける。
会長の個人運転手を長年務めてきた梶田信夫が
自転車に轢き逃げされて命を落とし、
残された二人の娘が父親の想い出を本に
したがっているので、相談に乗って
やって欲しいというのだ。梶田の足跡を
たどり始めた三郎を不審な出来事が襲う…

宮部作品にしては珍しく、それほど大がかりな
設定や仕かけがあるわけでなく、
ほんとに些細な日常をとっかかりにしながら、
次第に登場人物の過去や関係が明らかになって
くるという展開だが、相変わらずうまい文章で、
グイグイと話に引き込んでいくところはさすが。

しかし、肝心のなぞ解きの部分が、どうも
うまくはまっていない印象を受けた。
何かこの部分だけが、色がそろったパズルの
中でちがう色であるような、物語全体のカラー
から浮いてしまっているように思えるのだ。
静かに、淡々と梶田の過去へと迫っていく
展開を追う読者は、そこにセピア調の
せつなさを伴った解答を期待していたのではないか。
しかし出てきた答えは、妙に生々しくケバい色を
したものだったという感じで、なんだか後味も悪い。

さりげない設定から始まり、徐々に期待が高まった
分、ちょっとガッカリしてしまった。


■個人的ハマリ度  ★★★(★5つが最高)
宮部 みゆき
誰か Somebody