くもった心を照らす、赤い実。 | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

くもった心を照らす、赤い実。

【蛇イチゴ(映画)】

<2003年、日本>
●監督/西川美和
●出演/宮迫博之、つみきみほ 他


「誰も知らない」の是枝監督がプロデュースした
西川監督のデビュー作。
派手さはないが、しっかりと組み立てられた
ストーリーと、リアリティあふれる台詞で
最期まで退屈せずに楽しめた。

小学校教師の倫子の家は、父と母、それに痴呆症
の祖父の4人暮らし。同僚の教師と結婚も間近の
倫子は、平凡ながらもそれなりに幸せな暮らしを
送っていたが、ある日、祖父がなくなる。
そしてその葬儀で、父が実はリストラで会社を
首になった上に、多額の借金をつくっていたこと
を知る。その上、長く行方不明だった兄も現れて…

何も問題がなさそうに見えた家族が、ある事を
きっかけに、隠し持っていた本音をさらけだし、
次第に家庭が崩壊していくさまが、
ユーモアと生々しい会話で描かれる。
このあたりは、誰もが「あーわかるなあ」と
うなずきたくなる。
誰にも共通する、生活に根ざした視点が
活きているのだ。
それに、キャラひとりひとりが、
役者の好演もあって、実に魅力的。
詐欺師の兄を演じた宮迫の、ひょうひょうとした
立ちふるまいも、よくマッチしている。
つみきみほも久しぶりに見たが、
兄に対する、信じたいけど、信じられないという
微妙な心理を、うまく演じている。

タイトルにある「蛇イチゴ」が、兄と妹をつなぐ
キーになっているのだが、ラストにその答えとして
出てくる蛇イチゴの使い方も、なかなかしゃれていて、
あと味も非常にさわやかだ。
テーマはけっこうヘビーなのだが、
見た後は、心がふっと軽くなる佳作。


■個人的ハマリ度 ★★★★(★5つが最高)
バンダイビジュアル
蛇イチゴ