夫婦の味はお茶漬の味? | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

夫婦の味はお茶漬の味?

【お茶漬の味(映画)】

<1952年、日本>
●監督/小津安二郎
●出演/佐分利信、木暮実千代 他


黒澤明と並び称される日本映画界の巨匠、
小津安二郎。個人的には黒澤のメリハリの
効いたエンターテイメントの方が好みだが、
ひさしぶりに見た小津作品の、
ゆったりとした空気もなかなかよかった。

商社マンの男が社長の親友の娘と結婚する。
おとなしい夫に対し、勝ち気で活発な妻は
どこか不満を抱いていた。やがて夫婦は、
互いの感情のすれ違いに直面する…

製作されたのは、まだ戦後の匂いの残る時期
だけに、男性社会のイメージがあったが、
どっこい映画の中の女性たちは、
男たちを圧倒するパワーに満ちている。
買い物に、パチンコに街をかっぽし、
女同士で温泉旅行に出かけては、
夜は亭主の悪口大会で盛り上がる。

パチンコをはじめ、野球、歌舞伎、競輪
などの娯楽シーンもふんだんに登場し、
当時の庶民の楽しみ、暮らしぶりが
うかがえるのも興味深い。
若き日の笠智衆や鶴田浩二に出会えるのも
うれしい。

離れつつあった夫婦の心が、ある出来事を
きっかけに再び通いはじめる。
夫婦のあり方が、お茶漬というものに
集約されていく終盤の展開はお見事。
このあたりの微妙な機微は、若い時よりも、
ある程度、年を経てこそ感じ取れるものだろう。
見終わると、心がほっこりとあたたかく、
やさしい気持ちになれる。そんな映画だ。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
松竹
お茶漬けの味