ウワサと寝た16年。 | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

ウワサと寝た16年。

【噂の女(本)】 

●著者 :神林広恵
●出版社:幻冬舎(2005.9 発行)
●価格 :¥1,575


去年休刊となった「噂の眞相」。
そこで16年間、編集者として雑誌の終焉までを
見届けた女性の、激動の日々をつづった回顧録。
おもしろくて、またまた一気読み。

僕自身は「噂の眞相」は、それほど興味がなく、
一度も買ったことはない。本屋で見かけたら、
ときどきパラパラとめくる程度だった。
ウソとホントがごちゃ混ぜのスキャンダル雑誌。
しかし時に、衝撃的なスクープを放つ。
業界にファンが多く、芸能人にも意外と
読まれている。イメージとしてはそんな感じ。

22才で編集部に飛び込んだ著者は、
名物編集長、岡留のもと、
すれていないかわいい女の子から、
したたかな女編集者へと鍛えられていく。
その舞台裏は、誌面に負けず劣らず刺激的だ。
抗議の電話におののく新人時代、
夜な夜な新宿のバーを朝まで渡り歩いての
情報収集&人脈づくり、
ターゲットをねらっての延々たる張り込み、
右翼による編集部襲撃…

中でも編集者、神林にとって最大の事件は
取材執筆した記事をめぐって東京地検特捜部に
名誉毀損罪で刑事告訴されたことだ。
そして2005年春、懲役5ヶ月、執行猶予2年の
有罪が確定する。そう、彼女は編集者から
前科者になってしまったのだ。
本書にはその事の顛末が詳しく記されていて、
権力側のメディアへの対応もわかって興味深い。

最終号の原稿のラスト、「さようなら噂眞」の
一行がなかなか書けなかったというところには、
ちょっとグッときた。
それだけ濃いつきあいを続けてきた雑誌との
決別は、何か戦友との別れにも似た
万感の思いがあったにちがいない。
「噂の眞相」の読者いかんに関わらず
十分楽しめる一冊だ。


■個人的ハマリ度  ★★★★(★5つが最高)
神林 広恵
噂の女