こころが、帰る場所。 | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

こころが、帰る場所。

【船を降りたら彼女の島(映画)】

<2002年・日本>
●監督/磯村一路
●出演/木村佳乃、大杉蓮 他


「がんばっていきまっしょい」や「解夏」など
日本情緒あふれる演出が持ち味の磯村監督作品。
本作も、瀬戸内海の小島を舞台に、美しい風景を
織りまぜながら、ゆったりと物語が進んでいく。

東京の出版社に勤務する久里子は、カメラマンの恋人
との結婚を決意し、そのことを両親に報告するために
帰郷する。教師を定年退職した父と母は、
廃校になった小学校を改築して民宿を営んでいた。
父を前に、なかなか結婚のことを切り出せない
久里子の胸中に、幼い頃の思い出が蘇る…

特にどうということのない話で、ドラマチックな
展開や意外な事実が出てくるわけでもない。
久里子がどうして結婚話を切り出せないのかも
よくわからない。
だけど、どこか懐かしい景色と、
のんびりと流れる時間に、まあそのへんはいいか、
という気になってくる。

久里子が子供の頃のことを回想するシーンでは、
いつまにか昔の自分の姿を思い浮かべていた。
映像が映し出しているのは、愛媛の小さな島
なのだが、見ている者はそこに、
それぞれの故郷を重ねるのではないだろうか。

映画はちょっとしたサプライズがあって、
再び久里子が島を離れるところで幕を閉じる。
彼女は以前と同じではない。
背負っていたものを下ろし、
新しい思いを抱いて帰っていくのだ。
故郷を離れて暮らしている人が見ると、
きっと帰省したくなる。そんな映画だ。


■個人的ハマリ度 ★★★(★5つが最高)
東宝
船を降りたら彼女の島