しあわせのカタチ | 活字 & 映画ジャンキーのおたけび!

しあわせのカタチ

【幸福な食卓】  

●著者 :瀬尾まいこ
●出版社:講談社(2004.11発行)
●価格 :¥1,470


最近、本屋へ行くと、この人の本が平積みに
なって目立つところに置かれているのを目にする。
店員さんにもファンが多いらしい。

主人公、佐和子の家は父と兄の三人ぐらし。
母親は家を出ていない。
それぞれに問題を抱えた家族が、
つかず離れず、微妙な距離を置いて暮らす中に、
さまざまな出来事が降りかかる。

作者が現役の中学校教師ということもあってか、
中学生の佐和子を見つめる目は、温かくも鋭い。
クラスの中にあって感じる孤立感の描写など、
ヒリヒリとした実感を伴って伝わってくる。

設定を考えると、かなりシビアな状況のはずなの
だが、やわらかなタッチの文章がそれを中和させ、
ゆったりとした気持ちで読むことができる。
登場人物が見せる、やさしさ、思いやり。
作者は決して押しつけがましくは描かない。
だからこそ、読む者はそれに気づいた時に、
胸が熱くなるのだ。

光が見えかけた佐和子に、試練が襲いかかる。
それは読者にとっての試練でもある。
読んでいて思わず「そんな…」とつぶやいた。
佐和子がそれにどう立ち向かい、乗り越えるのか。
この部分は、ほんとに彼女と
同じ時間を過ごしたような気がする。

幸福な食卓は、そこにあるものじゃない。
それは「つくる」ものだ。
タイトルにはそんなメッセージが込められている
のではないだろうか。


■個人的ハマリ度  ★★★★★(★5つが最高)
著者: 瀬尾 まいこ
タイトル: 幸福な食卓